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先代、C43の興奮の冷めぬまま、次は新型である「02年式 AMG C32」に乗ってみた。これはボクが自分のクルマとして乗るべく、我慢できずに思わず注文してしまったものだ。

どうやら、このC32からAMGはやや方向転換を図ってきているようだ。
今までのAMGといえば、大排気量ユニット搭載による爆発的なパワーでぐいぐいと、という印象だったものだが、このC32ではC320の3.2リッターV6 SOHCをベースに、スーパーチャージャーによる性能強化という手法をとってきた。
加えてカムシャフト、バルブスプリング、ピストン、クランクシャフトなども専用設計されたものとなり、そのパワーユニットは最高出力 353ps/6,100rpm、最大トルク 45.9kgm/4,400rpmという実にAMGらしいパフォーマンスとなっている。パワーウェイトレシオにして4.59 kg/ps、カタログによれば0-100km/hを5.6秒という、セダンとは思えない驚異的な数字を誇る。

エクステリアはことさらチューンドであることを主張せず、先代に比べても、より普通のメルセデスらしさを強調しているかのようだ。しかし、じっとしていても、気持ち下げられた車高と、ノーマルCクラスよりも彫りの深いエアロで固められたことで、よりスポーティーさを増しており、無言の迫力を感じる。

インテリアも独特な艶を持つシナモラ・ブラック・ウッドパネルや、アクセントにアルミを配したシフトノブ、本革のスポーツシートなどと相まってとても落ち着いた仕上がりとなっている。そしてやや太めのステアリングの向こうには、見た目は普通のメルセデスレイアウトだが、なんと300km/hまで刻まれたメーターがAMGであることを主張していた。

まだ、慣らし中ということもあり、無理はしないつもりだったが、踏み込むほどにストレス無く回るエンジンの所為でついアクセルを開けてしまう。とにかく粛々と速いのだ!
1.6tもの車重をまったく感じさせず、坂だろうがなんだろうが一定の気持ちのままで走り抜けてしまう。

まったく「無の境地」とでもいえばいいのか、表情ひとつ変えず、ラクラクとものすごい仕事をこなしているという感じなのだ! このくらいのパフォーマンスを持つクルマとなれば、ドライバーはいやでも熱くならざるを得ないはずなのだが、極めて冷静にクルマとの対話を楽しむことが出来る。

353psを一気に開放しても、駆動系はそれをきっちり受け止め、なんの乱れも生じない。路面からのインフォメーションも的確に伝わってくるし、どんな速度域にあろうとも自由自在だ。
まるでステアリングと脳が直結したような感覚にとらわれる。
高速走行中でも、低速走行中でもすべての味がバランス良く調律されており、五感に響いてくる。

メルセデスらしい剛性感や、曲がる、止まるといった基本動作は、もはやあたりまえのものとして存在した上で、もうひとつ上のランクの性能や走りを期待させてくれる。確かにC43の後継機であるには違いないのだが、ずいぶん違うクルマという印象を持った。これはどちらが優れているということではなく、味つけのベクトルが違うという意味においてだが。

確かにこのクルマの性能は並のスポーツカー以上だし、数値的にもポルシェにだって引けをとらない。
しかし、もちろんスポーツカーではなく、いってみればただのセダンに過ぎない。
ところがセダンというクルマの「速さ」とはどうあるべきか? そして「快適」さとはどうあるべきか? という問いに対する解答を見つけたような気がする。

しばらくはこのクルマと対話を続けてみたい。
もう少し落ち着いてきたら、改めて、もう一度レポートをしたいと思う。

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